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WINE SALON REPORT

2019/3/6
第3回 関 修 ワインサロン ワイン会

代々木上原「ロカヴォール」にて
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第三回ワイン会  お礼とご報告

 
 3月6日に行なわれました第三回関修HPワイン会も無事終了することが出来ました。
 この度も会食形式ということで、会場を貸し切って人数も十二名に限定させていただきました。前回に続き、定員になりましたこと、心よりお礼申し上げます。
 
 会場は代々木上原駅近くのビストロ「ロカヴォール」にいたしました。今年は会食形式を二回予定しております。それはビストロ対レストランという『ミシュラン』掲載店の二極化に対応したフランス料理の楽しみ方を提示させていただこうと思ったからです。もちろん、関はそのような状況に納得している訳ではありませんが、批判的にそのコントラストを楽しんでいくのも「美食家」としての在り方と考える次第です。
店主でシェフの小松健作さんはフランスの三つ星レジス・マルコンで修業された経験もある方です。その料理もグランメゾンの料理をビストロ感覚でという「ビストロノミ」を体現しています。そこでワインも王道のフランスワインをリストアップしつつも、しかし、なるべくリーズナブルにというカリテ・プリの精神が貫かれています。奥様と二人で営まれるこの小さなビストロはまるでパリにいるかのような錯覚を起こすような雰囲気のあるお店で、皆で空間と時間を共有する喜びにあふれた店です。
 
 今回はフランスを代表する四つの地方のワインに料理をマリアージュするという趣向でした。まず、シャンパーニュには南信州産の苺とブリ・ド・モーのサラダ仕立て。奥様の出身が長野県ということもあり、長野県産の食材をふんだんに用いるのがこのビストロのポリシーです。また、最初の一皿はサラダ仕立てのビネグレット風味の一皿というのも通常のコースと同じ構成です。関は以前、海藻を用いた実に珍しく美味しい皿をいただいたことがあります。今回はシャンパーニュとのマリアージュを意識されてか、苺という王道の組み合わせでした。エドモン・シャルランは癖のないバランスの良いタイプのシャンパーニュで、爽やかな酸が苺との相性も良く、そこにフロマージュのコクが加わるというに憎い演出でした。
 
 白ワインはアルザスを選びました。様々な品種のワインがあるのですが、今回はこの地方を代表するリースリングとゲヴュルツトラミネールを混合したヴァン・ダルザスにしました。ゲヴュルツトラミネールの香水のような独特の芳香と甘さを伴う個性豊かな味わいをリースリングのサッパリ感でバランスを取ったブテイユです。それに合わせた料理は、ロワール産のホワイトアスパラの温製に信州サーモンの燻製とホタルイカをグリーンソースで。まさに季節感に溢れた野菜と魚介の取り合わせでした。ホタルイカのポシェがちょうどよく、サーモンのフュメ具合がワインのコクとよくマッチしていました。
 
 赤の一種類目にはボルドーから、オー=メドック(シサック村)のシャトー・ドスモン2014年を。クリュ・アルティザンというボルドーでは珍しい家族経営の小さなシャトーのもの。オー=メドックでは北に位置し、メルロの比率の高い、偉大さよりは親しみやすさが特徴のワインです。それにマリアージュさせたのは、このビストロのスペシャリテ、牛テールとオニオンのグラタンスープです。タッスでの提供でしたが、エキスがギュッと凝縮された充実した味わいで、少量でも食べ応え充分でした。このコクにはボルドーがぴったりです。コースには必ず登場する皿ですので、ぜひ一度訪問され、お食べになられますことを!
 
 そして、メインにはブルゴーニュ。トゥーロ・ジュイヨのメルキュレ、2016年を。本来ならボルドーの方が重いので順番的に逆ではと思われるでしょうが、おわかりのように、スペシャリテにはボルドーのマリアージュが正解ですので、このようになりました。また、それをよく考慮された一皿が供されました。マグレ鴨のロースト、菊芋のフリット添え、マディラソース。早い段階からオープンキッチンではフライパンで鴨肉の塊が表面に焼き目をつけるべく焼かれ、その音と香りが空間に漂うのに、お客様たちの食欲は倍増され、メインを待ち焦がれることに。オーブンでじっくりと火入れされた鴨は厚くカットされ、「これが鴨」と驚かれるお客様も。トピナンブールのフリットも一捻りあって美味。マディラソースにムータルドが添えられたシンプルな皿ながら、やはり今日の中で最高の一皿でした。鴨の味を堪能するのに、このメルキュレはまた実に相性が良かったです。最初、固いかと思ったのですがグラスの中で時間と共に香りが開き、味わいに複雑さと厚みが増すことで、適度な酸とベリー系の香りが鴨肉の美味しさを引き立てることに。
 
 デセールには練乳を用いたクレーム・キャラメルとマンゴーのグラス。ビストロ定番のデセールにも一工夫あるところがまさにビストロノミと感心した次第。
 
 今回、スタッフは小松シェフ一人で料理担当。ワインのサーヴィスは関が行いました。お出しするワインの説明をしながら、皆さん一人一人にワインを注がせていただくのは実は大変楽しいのです。その距離感と言いましょうか。自分も客になってしまうとなかなか席を立てませんので、折角来ていただいたお客様とのコミュニケーションにムラが出来てしまいます。このように自分が動けるのはサロン的にも良いことだと思います。サーヴィスとしては至りませんが、そこはどうかお許しを。
 小松シェフにはにわかソムリエをお許しいただき感謝します、また、素敵なお料理ありがとうございました。そして何よりこの度もご参加くださったお客様にお礼申し上げ、第三回ワイン会の報告とさせていただきます。

関 修

 

2019/3/6ワインリストと簡単なコメント

 

NV Edmond Cheurlin Brut Carte Noir / Richard Cheurlin (RM) PN70%,CH30%

(エドモン・シュルラン/リシャール・シュルラン〔レコルタン・マニピュラン〕、ブリュット・カルト・ノワール、ノン・ヴィンテージ、ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%)
 コメント: オーヴ県で最も有名な作り手の一人、セル・シュル・ウルス村のリシャール・シュルランが作るネゴシアンブランド。エドモンは1898年にこの地でメゾンを開いたリシャールの祖父の名前。所有する8.5haのリュット・レゾネ(出来る限り農薬を使わない)畑から家族で作っている。テイスティングコメントを見る限り、ノワールの濃厚さより爽やかなバランスよい味わいが特徴のよう。
 

2016 Edelzwicker / Vincent Fleith Vin d’Alsace

(エデルツヴィッガー/ヴァンサン・フライト、2016年)
 コメント: 今回の白はアルザスワイン、区分はヴァン・ダルザス、「高貴なブレンド」という名のワイン通り、単品種ではなくブレンドしたワインを指す。このワインはリースリングとゲヴュルツトラミネールから作られているとのこと。リースリングがドイツワインの主役としてニュートラルな魅力を持つのに対して、トラミネールは香りが華やかで個性的。アルザスで花開いた品種。この取り合わせ、楽しみ。是非、味わっていただきたい。
 

2014 Chateau d’Osmond / Phillipe Tressol Haut-Médoc Cru Artisans

(シャトー・ドスモン/フィリップ・トレソル、オー=メドック、クリュ・アルティザン、2014年)
 コメント: 赤の最初はボルドー、オーソドックスなオー=メドック、シサック村にあるフィリップ・トレソル氏が作るワイン。クリュ・ブルジョワの下に小規模の作り手の集団、アルティザン(職人)のカテゴリーがあり、トレソル氏は代表も務めた。サン=テステフに近く、メルロが6割弱、カベルネ・ソーヴィニヨンが4割弱といったセパージュ。9haの小さな畑から手作り感の強い誠実な仕事ぶりを味わえる一本と言えましょう。
 

2016 Mercurey / Theulot Juillot

(メルキュレ/トゥーロ・ジュイヨ、2016年)
 コメント: メインの赤はブルゴーニュ。コート・ド・ボーヌの南、コート・シャロネーズ地区の中でも赤をメインに作っている村メルキュレの一本。トゥーロはこの地の代表的作りミシェル・ジュイヨの親戚にあたる。ドメーヌは1969年、設立。11.5haの畑の7割がピノ・ノワール。リュット・レゾネで栽培。メルキュレはピノのチェリー感が感じられるタイプのワインが出来る地域。そこに如何に品格が加わるかが作り手の本領発揮というところをぜひ味わっていただきたい。