HOME | Wine Salon | 第7回ワイン会「隠れ家トラットリアでイタリアを満喫する夕べ」

WINE SALON REPORT

2020/3/26
第七回ワイン会
隠れ家トラットリアでイタリアを満喫する夕べ

img_0395.jpg img_0399.jpg img_0402.jpg img_0408.jpg img_0405.jpg

第七回ワイン会 お礼

 
 2020年の関修HPワイン会は波乱の幕開けとなりました。第七回にあたる今年最初のワイン会は去る326日(木)19時より東麻布「トラットリア アンティクワート」にて行われました。新型コロナウイルスの脅威が世界中を駆け巡り始め、ヨーロッパでは感染爆発が起こり、外出禁止令が出される状況となりました。日本はいち早く、二月から自粛ムードがあり、また全国規模の学校の休校措置を取りましたので感染の拡大は欧米よりは穏やかな推移を保っておりました。しかし、徐々にその数は増え、そして、ワイン会の前日水曜日の夜、小池東京都知事が感染爆発一歩手前ということで、週末の外出自粛、平日は出来る限り在宅勤務、夜は外出を控えるよう、声明を出したのでした。
 
 今回も店を貸切っての会とし、スタッフを含め22名の定員がすでに埋まっており、前日朝までキャンセルもなく、明日は無事に開催できると思っていたのですが、最後の最後に事態が急変したのです。そこで開催するか否か、慌ててスタッフと連絡を取り、今回の会場との仲介の労をとって下さったイタリアワインインポーター「アビコ」の阿掛社長にお店の見解など聞いていただいたのです。その結果、開催するが任意の参加とし、参加予定のお一人お一人に連絡し、再度出欠を取り直しました。そして、最終的にスタッフを含め、13名の方が東麻布の住宅街にある隠れ家トラットリアにお出かけ下さった次第です。阿掛社長、アンティクワートの伊藤シェフには多大なるご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます。また、参加予定だった方々には苦渋の決断を強いることになりましたこと、お許しください。今後はさらなるリスクマネージメントに留意する所存です。
 
 結果、これまでの着席の会食方式のワイン会とほぼ同じ規模の会となりました。各テーブル四名席で一番奥のテーブルに関が加わった次第です。どのテーブルも和気あいあいとした雰囲気の中、美味しいイタリア料理を堪能されておられました。ハム、サラミ、プロシュートといった定番のアンティパスト・ミストから始まり、和牛のカルパッチョ、トリッパ、鱈のブランダードとワインにピッタリの前菜が続き、パスタが二種類、魚、そしてメインは和牛のタリアータ。フレンチに比べ、シンプルな調理で素材そのものの美味しさを味わうのがイタリア料理の常道。とりわけ、タリアータはボリュームもあり、また火通しも見事で「これぞイタリアン!」と感服した次第です。
 
 ワインは阿掛社長にお願いし、ヴェネトのスプマンテ、同じヴェネトの白、メインに合わせる赤はトスカーナの「ロッソ・ディ・モンタルチーノ」を軸としました。そして、関をはじめ有志が持参下さった赤が五種類。トスカーナ、ピエモンテがそれぞれ二種類。ロンバルディアが一種類と図らずもイタリアワインでも銘酒の産地のワインをテイスティングする機会を得ました。ワインをお持ち下さった方々に感謝する次第です。13名で11本のワインと贅沢なワイン会となりました。関のテイスティングノート、そして当日配布させていただきました資料は別途掲載させていただきます。総論的なことを一言申し上げますと、イタリアワインは一般的に、白は水のように軽く、赤ワインは「酸」に特徴があります。ですので、料理と合わせるには極めて適しているのです。トマト味の料理でも赤、白それぞれの合い方で楽しめる。また、この夜はトスカーナ(サンジョヴェーゼ)とピエモンテ(ネッビオーロ)というイタリアの二大赤ワインを比較試飲できたことは、食事を楽しみながら、ワインを学ぶ良い機会だったと思います。
 
 こうして、2020年度のワイン会も何とか行なうことが出来ました。これもひとえに、「楽しく美味しい」という当HPのモットーにご賛同いただき、勇気をもって東京タワーの麓へと足を運んで下さった皆様のおかげと心からお礼申し上げる次第です。また、欠席された方も疫病さえなければ、美しいタワーの夜景をご覧になれたわけで苦渋の決断に共感を覚えます。そして、迷いの中で開催へと関を支えて下さった阿掛社長、スタッフの方々に感謝します。出来れば、この後、予定通り、6月にボルドーワインでの会食、8月に恒例の神泉「ビストロ・パルタジェ」での三周年のワインパーティーとワイン会を行ないたいと思います。が、これもコロナの災禍が過ぎ去ってのことと思います。少なくとも8月には皆様と一堂に会してHPの三周年を共に祝うことが出来れば幸いです。
 
 最後にもう一度、今回多大なご迷惑をおかけした「アビコ」の阿掛社長、「トラットリア アンティクワート」の伊藤シェフにお詫び申し上げると共に、来年、リベンジではありませんが、皆様と東京タワーに見守られながら、再度イタリアを満喫する夕べを開催出来ればと思っております。
 では皆様、今年もまた「美味しく楽しい」時間を分かち合えますように。
 まずは、くれぐれもお身体大切にこの厳しい時期を乗り切られますことを。

関 修

開催概要

  

日時 2020326日(木)午後7時より
場所 東麻布「トラットリア アンティクワート」(貸し切り、着席)

   東京都港区東麻布2-22-4 麻布十番ガーデンスクエア
   03-5797-7272
    食べログ情報    お店HP

会費 10,000円(食事代+ワイン代等すべて込み)
募集人数 20

 ※(イタリアワインを持参したい方、大歓迎です) 


第七回ワイン会(於トラットリア・アンティクワート)のワインリスト及び解説

関  修

 
今回のワイン会はイタリア料理にイタリアワインをマリアージュさせるという作業が必要とされます。関はフランス料理・ワインを専門としますので、今回は「餅は餅屋」ということで懇意にさせていただいておりますイタリアワイン専門インポーター「アビコ」の阿掛社長にお願いし、リストランテ、さらにはその店の料理に合うワインのチョイスをお願いした次第です。関は事前に今回のトラットリア・アンティクワートに伺い、食事をしました。ワインは「アビコ」のものでしたが、今回供されるのはお店のリストにないワインで楽しみにしております。以下、各ワインの解説とテイスティングコメントを記載します。
 
具体的な銘柄としては、供された順に、
 
1.スパークリング ニヴェス・カッペリーニ・ロゼ・スプマンテ・ブリュト(Nives Cappellini Rose Spumante Brut) N.V、レ・コンテッセ社(Le Contesse)「アビコ」
 ヴェネト州のコネリアーノ地区で作られるいわゆる「プロセッコ」と呼ばれるスパークリングのヴァリエーションです。セパージュは白葡萄のグレラ(プロセッコ)60%、地品種の赤葡萄ラボーソ40%という割合です。
 今回のワイン会で関が最も興味を持ったワイン。ラボーソの渋み(タンニン)が微かながら上手にアクセントとなり、味わいに深みを与えています。炭酸はあまり強くありませんがその分、穏やかでスムースな飲み心地も独特でした。
 
2.白  コルテ・マルツァゴ・クストーザ「ラ・ソルダネッラ」(Corte Marzago Custoza "La Soldannella")2017、テヌータ・アウレリア(Tenuta Aurelia)「アビコ」
 ヴェネト州のクストーザ(DOC)で作られるソアーヴェと並ぶヴェネトを代表する白ワイン。セパージュはコルテーゼ25%、ガルガネーガ25%、トレッビアーノ・トスカーノ20%、 トカイ・フリウラーノ30%と混醸を楽しむワインです。
 基本的にイタリアの白は軽く、料理と一緒に飲むのに適していますがこのワインも例外ではありません。ただし、セパージュが多彩な分、味わいに微妙な複雑さを感じます。酸だけでなく、他の要素もバランスよくまとまっていました。
 
ここで、メイン料理に合わせる赤ワインの前に、関が考えるイタリア赤ワインの楽しみ方についてお話させていただき、具体的にワインを三銘柄持参して試飲していただきました。また、皆さまが持参されたワインについて解説させていただき、一緒に楽しませていただきました。
 
3.赤 フランチャコルタ(ロンバルディア州)、「クルテフランカ・ロッソ(Curtefranca Rosso)」、2015、カ・デル・ボスコ(Ca’del Bosco)、DOCクルテフランカ「篠原さん」
イタリアのシャンパーニュに相当する「フランチャコルタ」にもスティルワインがあり、2009年からクルテフランカを名乗るようになりました。作り手はフランチャコルタを代表するメーカー。カベルネ・ソーヴィニヨン20%、カベルネ・フラン22%、メルロ34%、ネッビオーロ11%、バルベーラ13%とボルドースタイルにイタリアテイストを加えた混醸になっています。
セパージュがボルドーに近いのでイタリアワインっぽくはないのですが、フランスワイン好きの関としては好みのタイプのワインです。イタリアの葡萄が四分の一を占めますのでその分、酸を感じ渋みを抑制します。程よい垂直方向の深みがあり、ボディも適度にしっかりしています。重すぎず、軽すぎずをどう捉えるかが好みの分かれるところでしょう。
 
4.赤 ピエモンテ(州)、「ロエロ・リゼルヴァ・ヴァルマッジョーレ(Roero Riserva Valmaggiore)」2015、カッシーナ・キッコ(Cascina Chicco)、DOCGロエロ 「関」
ピエモンテと言えば、バローロ、バルバレスコがすぐに思いつかれるかと思いますが、ロエロは2004年にDOCGに認定された新しい銘柄。白のロエロ・アルネイス(種)で有名ですがネッビオーロ100%の赤ワインも作っております。正確にはアルネイスを5%まで混醸しても良いのですが、このワインはネッビオーロ100%です。恵まれた立地にもかかわらず、価格的にはリーズナブルにネッビオーロを楽しめる隠れた銘柄です。
表情の豊かなモダンな作りのネッビオーロと感じました。フワッと香りと味わいが広がるのではなく、タンニンを軸に果実味を生かして、メリハリのある味わいです。早くから飲めて、肉料理に合わせるにはよいのではないでしょうか。
 
5.赤 ピエモンテ(州)、「バローロ(Barolo)ブリッコ・ボスキス(Bricco Boschis)」2012、カヴァロット(Cavallotto)、DOCGバローロ 「桑名さん」
 言うまでもなく、「ワインの王、王のワイン」と呼ばれるイタリアワインを代表する銘柄。ネッビオーロ100%で作られます。カヴァロットは1928年創業のバローロを代表する作り手の一つ。家族経営で生産量は少なく、創業当時と同じ自然派の製法を守り、パーカーに「伝統製法にこだわる非凡な作り手」と評されています。ブリッコ・ボスキスはブルゴーニュの「畑(クリマ)」の名前に相当しますが、醸造所の名前と記されることもあります。
 これは典型的なバローロ。色も茶色がかり、複雑な揮発性の香しい香り、口に含むと口中一杯に広がる旨味。ブルゴーニュと何処が違うかと言えば、やはり酸の感じ方ではないでしょうか。ブルゴーニュは酸が引いて渋みがアフターに出てくるのに対して、バローロは酸がそのまま最後まで主張し続けます。実に見事な出来で、ワインだけで楽しみたくなってしまいます。
 
6.赤 トスカーナ(州)、「モンテクッコ ロッソ(Montecucco Rosso)」2012、テヌータ・リンポスティーノ(Tenuta L’impostino)、DOCモンテクッコ「金子さん」
 モンタルチーノの南に位置する産地。1998年にDOC2011年にDOCGに昇格するも、DOCG「モンテクッコ」を名乗るにはサンジョヴェーゼを90%以上使用する必要があります。このワインはサンジョヴェーゼ80%、シラー10%、メルロ5%、プティ・ヴェルド5%のセパージュなのでDOC「ロッソ(赤)」が付くことでセパージュの違いを明確にしているのです。前述のロエロに似て、リーズナブルにサンジョヴェーゼの良さを味わえる銘柄として近年注目されています。
 これDOCは初めてで勉強になりました。結構古いのですがフレッシュさが残っていて、サンジョヴェーゼのちょっと刺激的な酸も生き生きと感じられました。キャンティより果実味がしっかりしているのではないでしょうか。シンプルな作りで料理と合わせるには大変よろしいかと思います。
 
7.赤 トスカーナ(州)、「ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ(Vino Nobile di Montepulciano)」、2016、ラ・ブラチェスカ(La Braccesca)、DOCG「」と同じ「関」
トスカーナと言えば、キャンティにブルネッロ・ディ・モンタルチーノが思い浮かぶと思いますが、次いでこのヴィーノ・ノビレが有名です。葡萄品種はサンジョヴェーゼの亜種、プルニョーロ・ジェンティーレ。価格的にもブルネッロよりは手を出しやすく、リストランテでもリストアップされておりますのでこの銘柄をチョイスすると通に見られます。ラ・ブラチェスカはトスカーナを代表するアンティノリ社の所有する醸造所です。
タンニンがしっかりしていて、酸がその分控えめに感じるので全体の味わいはマイルドな仕上がりでボルドーワインに慣れている方には親しみやすいと思います。果実味に厚みがあるのがヴィーノ・ノビレの特徴です。ボルドーで言えば、サン=ジュリアンといったところでしょうか。その名の通り、「品格」で飲ませるワインです。
 
8.赤  トスカーナ(州)、「ロッソ・ディ・モンタルチーノ(Rosso di Montalcino)」2017、コンティ・コンスタンティ(Conti Costanti)、DOC「」と同じ「アビコ」
 トスカーナ州を代表する銘酒、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを気軽に楽しんでもらえるようにモンタルチーノで1980年代から作られ始めたブルネッロ種(サンジョヴェーゼ・グロッソ)100%からなる若飲みの赤ワイン。ボルドーで言うとセカンドワイン的な存在。
 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノとの違いを一言で言えば、厚み、舌に乗った時の垂直方向への圧、さらには口に含んだ時の膨らみといったものがロッソの方は明らかに「薄い」。軽やかで上質の果実味を楽しむワイン。その分、どうしても物足りなさを感じてしまうのが残念。しかしその分、料理には合う。シンプルな味付けの牛肉という今日のメインとの相性にはまさにピッタリでした。お見事!
                                                                                                                                                                               

※下記は当日配布したレジュメです。
 

 「フランスワインとの比較から見たイタリアワインとは」..pdf